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2009/11/02

「ブルータワー」 石田衣良

石田衣良によるSF長編小説「ブルータワー」は、9.11 世界貿易センタービルの崩壊の衝撃から生まれた。

主人公 瀬野周司は、悪性の脳腫瘍におかされていた。 脳腫瘍による激しい頭痛の中、意識を失った主人公は、200年後の未来にいた。

200年後の未来では、東西大戦の結果、「黄魔」と呼ばれるインフルエンザを改良した生物兵器のため人類は滅亡の道を進んでいた。

生き延びるため、人類は高さ2kmの巨大な塔(スーパーストラクチャー)の中で高度によって階級社会・格差社会が形成され、塔に入れない人類との戦いが繰り広げられていた。

主人公 瀬野周司の意識は、未来の子孫セノ・シューに乗り移り、「人は高さから自由であるべきだ」とつぶやく。

未来を「黄魔」から解放する鍵は、瀬野周司に託された。

現代社会にはびこるテロ、格差社会、インフルエンザ、グローバル社会から予想された未来が描かれている。

一方で、人間が生きるために必要な力が、他者の思いにこたえるために、自分が信じる使命を成し遂げることだと著者は教えてくれる。

2009/10/12

ねじまき鳥クロニクル [満州から現代]

ねじまき鳥クロニクル(年代記) 著者 村上春樹

第1部泥棒かささぎ編、第2部予言する鳥編、第3部鳥刺し男編

読後しばらくこの一連の小説について考えている。

「ひとりの人間が、他のひとりの人間について十全に理解するというのは果たして可能なことなのだろうか」

主人公ともいっていい岡田トオルは、問題の核心に到達するために、多くの不可思議な人びとと出会い、多くの不可思議な現実を知り、多くの不可思議な出来事に遭遇した。

それは、果たして小説にのみ起こりうるありふれたノンフィクションなのだろうか。

突然いなくなった妻クミコと義理の兄の綿谷トオル。

予言者なのか人を癒す能力をもつ者なのかよくわからないが、そのときどきで不思議な力を発揮し、岡田トオルにとって少なからず影響を与える本田老人、加納マルタ、加納クレタ、赤坂ナツメグ、赤坂シナモン。間宮中尉、笠原メイ、牛河はいったいどういう関係があるのか。

そして首つり屋敷とそこにある井戸。

この小説は、満州、ノモンハン、シベリアでの悲惨な出来事と現代がそれぞれの登場人物に関わっている。筆者は満州での日本人が行った所業やまた日本人が受けた苦痛が、現代になってもいまだに大きな影響を与えていることをも言いたかったのか。一見平和に見える日本が、未だに満州での出来事同様、何も変わっていないことを訴えたかったのか。

主人公の岡田トオルはその苦悩と苦痛を受け止め、真正面から向き合おうとしたようにも見える。そしてその結果、失踪した妻クミコまでたどり着けた。

そして、岡田トオルが井戸の中にいる間に浮き出た青いアザと、それと同じ青いアザをもつ赤坂ナツメグの父親で満州の動物園の獣医をつないでいる。

加納マルタは言う「ここは暴力的で、混乱した世界です。そしてその世界の内側にはもっと暴力的で、もっと混乱した場所があるのです。」

仮縫い部屋では何がなされていたのか。

井戸とホテルはつながっていて、ホテルで岡田トオルは綿谷ノボルと対決することになる。そこで綿谷ノボルをバットで殺してた。(意識の中でというべきか)

獣医は、動物園で軍人が中国人をバットで殺すのを見ていた。

再び井戸にもどったときは、アザが消えていた。

綿谷ノボルには特別な力があったが、それは分からない。

ねじまき鳥とはいったい。岡田トオルやねじまき鳥がねじを巻く音を聞いていた。動物園で動物を射殺した青年軍人もねじまき鳥の声を聞いた。おそらく赤坂シナモンも子供のころねじ巻き鳥の声を聞いた。

そういえば、「ノルウェイの森」でも、僕は朝ねじを巻いていたが、ねじを巻くとう行為は時間を進める(それはときには強引に)行為の象徴なのか。

とにかく、咀嚼不十分で、もう一度読みたくなる本である。

2009/08/07

「石に言葉を教える」 柳田邦男著

「石に言葉を教える」 柳田邦男著 には、現代を生きる我々に対して、はっとさせられる出来事を通じて、人生の在り方を教えてくれる。

・14年目にやってきた男の出番

アメリカに住む日本人夫婦が、ダウン症の子どもを授かった。

知的障害者の子どもを前に動揺する夫婦に、アメリカ人医師が次のように述べた。

「あなた方は、障害を持った子供を立派に育てられる資格と力のあることを神様が知っておられて、お選びになったご夫婦です。どうぞ愛情深く育ててあげてください」と

当初動揺していた夫婦は、その言葉を聞いて、自分達がしっかりしなければと育児に前向きになることができた。

アメリカの医療は、こうした患者の病気を診るだけではなく、家族に対してもケアが必要なことを理解し、医師や看護士やカウンセラーなどがチームを組んで実践しているという。

上記の父親にはさらにこのような言葉がかけられた。

「誰でも障害をもった子どもが産まれると、気が動転して、今すぐ子どものために何かできることはないかと考え、なかには会社や仕事をやめてしまう父親もいます。けれども、それではいい答えを出すことにはならない場合のほうが多いのです。」

「あなたが、父親としての役割を果たす時、父親の出番というものが、いずれ必ずやってくるのです。それまで待っていなさい。焦らないで、性急に考えないでください。」と

そして、父親は仕事をやめることを思いとどめ、夫婦は子どものために一生懸命育児をした。

14年後、あることから特例子会社で障害者を雇用する制度のことを知った父親は、自分の勤める会社の一部の仕事を特例子会社が請け負うことができると考え、その設立に奔走し、見事障害者雇用と会社の利益が結びついた特例子会社を立ち上げることに成功したという。

そんなエピソードを読んで、僕も焦らず、時間をかけてでも、じっくりと考え、行動してゆことで、今の状態から抜け出すことができるはずだという妙な勇気が湧いてくるのだった。

2009/07/01

水田の生物をよみがえらせる-農村のにぎわいはどこへ

かって、日本の農村が近代化されておらず、集落の人々の長年にわたって培われた知識、知恵や経験によって、水田が管理され、里地、里山が維持されていた頃、水田は多様な生物や植物にとって、なくてはならないすみかだった。

農家はみな助け合って集落や水田を維持管理し、農業を行っていた。毎日の重労働の合間にある祭り等が唯一の楽しみだったのか、いや日々の助け合いのなかにも、共同体ならではの楽しみがあったはずである。

それが、日本の高度成長時代に、農村の近代化・都市化が進み、農薬や除草剤、機械による農作業が取り入れられることにより、農家は長時間の重労働から解放されることになる。

手作業で行われていた除草が除草剤に、刈りとった草や厩肥が化学肥料に、土で塗り固められていた畦や用水路がコンクリートに、牛が耕運機に、藁ぶき屋根がトタンや屋根に、燃料は薪や炭から灯油やガスに、藁でつくった俵が紙袋に変わっていった。

さらには、米の消費減少、減反政策による休耕田、水田の放棄地の増加もあった。

そして、その過程において、時代の変化は容赦なく農家の生活や、水田、里地、里山の景観を変えていき、 生物の多様性も失われていった。

以前は当たり前にいた生物や植物が、いまや希少動物、絶滅危惧種になろうとしている。

筆者は、近代化される前の農家の生活を紹介し、関わってきた景観管理(福井県敦賀市の中池見湿地)によって、水田を中心とする農村の生物、植物の多様性が、自然を維持管理することができることを教えてくれる。

しかし、一方で過疎化・高齢化・都市化する農村が、その景観の維持・管理をすることがどれだけ大変なことか、また農村を中心とする景観が美しいだけでなく、景観を維持するために農家の知恵や経験を活かすことの重要性も訴えている。

神の手の提言-日本医療に必要な改革 福島孝徳著

様々な問題を抱えている日本医療。最近は病院の不正行為がニュースの話題となることも多い。

豊富な海外での臨床経験や大学教育を経験している筆者福島孝徳氏が、日本の医療の現状に危機感を抱き、その解決のための根本的改革への提言をしている。

日本の医学界は、臨床技術に対する評価が低すぎる。医学知識、医療技術、判断力、手術技能の不足している医師、モラルの欠けている医師を生み出す日本の医療教育現場。臨床実習が少なすぎる等の問題を様々な問題を抱える医学教育の現状への提言、苦言を呈している。

また、主要7カ国中最低の日本の国民医療費に、病院は崩壊しようとしている。厚労省の国民医療費削減により、診療報酬は引き下げられ、病院は必要な手術器具、材料、そして医師を確保できず赤字経営に苦慮している。このまま医療費削減の流れが続けば、日本医療の進歩、改革はないという筆者の主張がある。

医療サービスにはお金がかかるという現実、経済力による医療格差のある海外の現状を紹介し、経済力による医療費負担もあってよいとし、それが医療サービスの向上につながるという。

海外の事例との比較の中から、筆者は大胆な日本医療の改革案を本書にしたためている。

2009/06/17

しのびよる破局 生体の悲鳴が聞こえるか

しのびよる破局 ー生体の悲鳴が聞こえるかー 辺見庸 筆者は問い、そして言い放つ。

「重層的危機の状況において、自分たちを脅かしてきているものを総合的に考えることはできないか」 「心の問題もパンデミックなのだということを仮説したい」 「高度資本主義とは、人間生体にとって、外在するシステムであると同時に、内在的な、心的メカニズムにまでなっている」 「いま、道義とかモラルとか人倫とか、その鋳型になるようなものが、ほとんど粉々になってしまったのではないかとおもう」 「労働の社会的性格が商品の交換価値としてあらわれ、愛や誠実といったあるべき徳目の内実も貨幣価値にすりかえられた」 「人間が本来社会的にもっているといわれる諸権利。教育を受ける権利、生存する権利、労働する権利、労働の基本権を保障するとか、そういう権利がもう完全に破綻している」 「本当に取り戻さなければならないのは、経済の反映ではない。人間的な諸価値、いろいろな価値の問いなおしが必要なのではないか。でなければ、絶対悪のパンデミックは、いったん終息しても、またかならずやってくるだろう。もっとひどいかたちでくるかもしれない」 「絶対的な悪はどこにあるか。いまは悪が悪の顔をしていない。善の顔をしているともいえる」

2008/10/03

書籍「天安門 十年の夢」 Tan Romi

中国人の父と日本人の母をもつノンフィクション作家である筆者は、1989年に起こった天安門事件をテレビで見て、その後、亡命した人達を追い続け、彼らの10年を書き綴った。

・ある長いストーリー 蘇暁康・知識人
・まだ僕は生きている 張伯笠・学生リーダー
・「野獣の群れ」の中で 岳武・労働者
・「民主の女神」との十年 柴玲・学生リーダー

人民が、「自由」と「民主」を訴えた天安門事件の中心にいた人々の、亡命後のストーリー、天安門事件とは彼らにとって一体なんだったのかを問うた本書は、読み応えのあるものだった。

情熱を注いだ活動について、それぞれの口から語られる言葉は、意外なものだった。

同時に、民主化要求が純粋なものであったのか?という疑問が湧いたのも確かである。確かに、当時の中国は時代の流れとして、西側諸国からの情報の流入により知識を得、東欧諸国の崩壊を見、人民は潜在的によくわからないまま自由を求め、民主を求めていたのではないのか?

そして、その熱にうかれた一部の人達の行動が、知らぬ間に拡大していったのではないだろうか。

天安門事件の真相は、もっと複雑なものであるだろうが、時代の要請だったのかもしれないし、一時的なブームだったのかもしれない。

本書を読んで、なによりも中国人のしたたかさと個人主義の強さを感じた。

2008/10/01

書籍「うつくしい子ども」 石田衣良

石田衣良の小説「うつくしい子ども」を読んだ。

中学生が、小学生を殺害した。それは自分の弟だった。

弟の罪とは別に、なぜ弟が殺人を犯したのか、主人公は丹念に調べていく。「夜の王子さま」というキーワードが浮かんでくる。

その結果、弟が同じ中学の生徒に心を操られていったことが明らかになり、真相とともに最後の悲劇によって幕が下ろされる。

「誰にだって二重人格なところはある。そうでなきゃ、今どきの日本で中学生なんてやってられないから」

人が人の心を操る漫画「MONSTER」を思い出した。

「大人になること。正しさの基準を外側にではなく、自分自身の中心に据えること」

親として、もっともっと子どもを見る目を養う必要があると、再認識した。

2008/09/10

書籍「時が滲む朝」

第139回芥川賞受賞作「時が滲む朝」 楊逸 作を読んだ。

1989年天安門事件が中国で起こった。中国人民による民主化要求の運動である。6月4日、ついにデモ隊と軍隊が衝突し、多数の死傷者がでた。

当時、私は中国貿易に従事していた。 会社関係者が出張で上海にいたが、中国人からの連絡で急いでタクシーに乗って、バリケードが張られた上海市内を透り抜け、這々の体で帰国したことを思い出す。

その後もしばらくは、中国の混乱に業務が巻き込まれ、書類が検閲により紛失したりした。

「時が滲む朝」は、この民主化運動に身を投じた大学生「浩遠」を中心に、民主化運動へ突き進み、その後大学を退学し、日本で生活しながら民主化運動と向き合う人生を描いている。

この小説では、あの民主化運動はいったい何だったのか?という命題には踏み込んでいないところが物足りないが、民主化運動に身を投じた学生や教師の行く末に一抹の寂しさを感じさせている。

北京五輪で注目された中国であるが、いまだに民主化は実現されていない状況を露呈するに至った。そしてまた、現在の中国における愛国の志は、民主化の実現ではなく、別の方向に向けられていることに、中国の将来のあやうさを感じさせる。

2008/05/06

西野仁雄著 「イチローの脳を科学する」

西野仁雄著「イチローの脳を科学する」(幻冬舎新書)を読みました。

イチローが、メジャーリーグでなぜあれだけの活躍を可能にしたのかを、筆者は大脳生理学の見地から明らかにしようとしています。

この本は、スポーツをやっている小中学生にぜひ読んでもらいたいと思います!(息子にもそう言うんだけど・・・)

目的意識をしっかりともつこと、そのために練習を積み重ねることの大切さを理論的に説明しているだけに、この本を読めば、意欲が湧くこと間違いなしであると思います。

イチローは幼少期から青年期にかけて毎日練習を繰り返し、野球の技術を積み重ね、磨き上げてきました。それが大選手になった大きな要因だと、筆者は語っています。

練習により、イチローの脳の運動野や、それに関する脳部位は他の人より一段と発達したに違いない。そして、神経細胞の枝ぶりがよく発達すると、神経細胞の連絡が密になり、その連絡において長期増強反応が起こると、情報の伝達がより速く、密になると筆者は強調しています。

「身体で覚える」というのは、実は神経回路をうまく作動させることであるということらしいのです。

また、野球の練習を繰り返し行うことにより、脳に同じ刺激が繰り返し入ってくることにより、野球の運動プログラムが脳の中にできあがり、さらにその神経回路が強化され、野球の動作において、無意識に身体を上手く使えるようになるというのです。

著書は、イチローがそのためにどんな意志の持ち主であるか、またどんな環境で育ってきたか、「自分で自分をコーチする能力」をどうやって手に入れたかを懇切丁寧に説明してくれています。

まさに今成長期にある青少年は、この本から何かを学んでもらい、今の自分に活かしてもらいたいと思い、ここに紹介しました。

2008/04/18

脳を活かす勉強法 茂木健一郎

茂木健一郎氏の本「脳を活かす勉強法~奇跡の強化学習~」(PHP研究所)を読んだ。

学生時代から、どうすれば効率の良い勉強ができるのか悩んだものだった。

茂木氏は、この本において、脳科学者として、また東大生としての経験に基づき、その問いに見事に応えてくれている。その経験が、また普通ではないのだが・・・なんとなく、誰でも東大に入ることができるような錯覚を起こすかも!

脳が学習を行うためには、なにが必要で、どうすれば学習する回路を脳のなかにつくることができるのかをわかりやすく説明している。

自分の脳がどのように働いているかを理解すると、次からは効率の良い学習ができるような気がしてくる。(笑)実際は、そうは問屋が卸さないだろうが・・・coldsweats01

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